大幸薬品「正露丸」パッケージ訴訟の考察:判決のまとめ(2)②

(2)②被控訴人表示2が控訴人各表示と同一又は類似の商品表示であるか

 称呼についてみると,控訴人各表示からは「セイロガントーイエー」の称呼が生じ,被控訴人表示2の「正露丸糖衣S」の部分からは「セイロガントーイエス」の称呼が生じる。これらを比較すると,10文字からなる称呼のうち最後の1文字が違うだけである。

 観念についてみると,控訴人各表示からは,周知著名の糖衣錠タイプの家庭用胃腸薬「正露丸」である「セイロガン糖衣A」という商品名が想起されるといえる。これに対し,被控訴人表示2の「正露丸糖衣S」の表示からは,そのような商品名の糖衣錠タイプの家庭用胃腸薬「正露丸」であるとの観念が生じると考えられる。

 それぞれの外観は,前記の控訴人各表示の構成と被控訴人表示2の構成で記述したとおりであり,これらが外観上類似しているといえないことは明らかである。

 

 称呼については,確かに,「セイロガントーイエー」と「セイロガントーイエス」とでは,最後の1文字が異なるだけであるし,観念にしても「セイロガン糖衣A」と「正露丸糖衣S」という商品名を比べると,実質的な違いは「A」と「S」の部分だけといえる。アルファベットの「A」と「S」とは,一般に発音上紛らわしいものではなく,聞き間違えによる誤認の可能性がないとはいえないにしても,その可能性はそれほど大きくない。また,医薬品が陳列されている薬局やドラッグストア等で需要者が買い求める一般の家庭用医薬品であるという本件の取引の実情に照らすと,称呼のみで取引される可能性がそれほどあるとも考えにくい

 外観を見ると,「セイロガン」ないし「正露丸」のカタカナと漢字の違いほか,全体にデザインが明らかに異なっているのであり,特に大きく表示されている「A」と「S」のデザイン上の差は大きい

 

 「正露丸」と「糖衣」が普通名称であり,これらの表示部分についても文字の表記,フォント,デザインが異なることに加え,控訴人各表示と被控訴人表示2の実質的な相違部分である「A」と「S」の間で顕著にデザインが異なることからすると,両者の商品表示は類似しているとはいえないと判断するのが相当である。

 

つまり、「両商標は類似していない」ということです。

理由は非常に不明瞭です。

 

「称呼は、類似しているけれども混同のおそれは大きくない。

観念は、「セイロガン糖衣A」と「正露丸糖衣S」という商品が想起される。

パッケージの外観は非類似である。

家庭薬品は称呼で取引される可能性が低いから、類否判断に対する影響は小さい。

大きく表示されている「A」と「S」の差が大きいから影響が大きい。

称呼と観念が類似していたとしても、取引の実情から類否判断に影響を与える外観が類似していないから非類似である」

 

ということでしょうか。