書体が違うと商標権侵害にならないの? 「南京町」判決

南京町商店街振興組合の登録商標(登録5193188)

 

【指定商品又は指定役務】

30 茶,氷,菓子及びパン,調味料,穀物の加工品,ぎょうざ,しゅうまい,肉まんじゅう,ハンバーガー,べんとう,即席菓子のもと

43 飲食物の提供

 神戸市の中華街・南京町の商店街振興組合が登録商標「南京町」を商品に無断使用したとして、食料品製造会社「神戸瑞穂本舗」(神戸市)に1650万円の損害賠償を求めていた訴訟の判決が2014年3月6日に大阪地裁下されました。

 

  「神戸瑞穂本舗」は、もともと南京町の商店街振興組合の組合員でした。神戸瑞穂本舗は、1994年ごろから「南京町冷麺」という名称の商品を製造、販売していました。

南京町の商店街振興組合は、指定商品を穀物の加工品等とし、商標「南京町」を2008年3月12日に商標登録出願しました。

 

 谷有恒(ゆうこう)裁判長は、

「「南京町」という,一部共通する部分がある称呼,観念を合わせ考えても,同部分は被告標章の要部とはいえない上,被告標章が,いずれも標準的な字体で構成され,原告商標の出所識別機能を果たす特徴的な字体(ロゴ)を想起,感得させるようなデザインがされていない以上,需要者である一般消費者において,被告商品の出所が原告であると誤認混同するおそれはないといわざるを得ず,結局,原告商標と被告標章はいずれも類似しない」として組合側の請求を棄却しました。

 

 つまり、

  1. 「南京町冷麺」の「南京町」は商標の要部ではない
  2. 登録商標「南京町」は、普通の書体では登録されなかったのだから書体自体に特徴があり、書体が似ていないのだから、両商標は類似しない

のだから、消費者が誤認混同することはないということです。

 

 この判決は妥当なものと思います。地名だけでは出所識別機能がないからです(商標法3条1項3号)。南京町の商店街振興組合は、2013年12月20日に「南京町」を標準文字で出願していますが、同じ理由で拒絶されると思います。