「平成26年特許法等改正説明会」に参加しましたので、商標法に関する内容を概説します。
<保護対象の拡充>
背景
1. 欧米等では、色彩や音といった我が国では保護していない「新しい商標」を既に保護対象としており、著名な商標が数多く登録されている。
2. 実際に、こうした海外諸国において、我が国企業が出願や権利取得を進めるケースも増加しており、我が国における保護ニーズも顕在化している。
3. 我が国商標法の保護対象とされた商標については、①登録によって、侵害行為に対する差止めや損害賠償の請求といった権利行使が可能となるほか、②「マドリッド協定の議定書」の仕組みを利用して複数国への一括出願が可能となるといった実益が生ずる。
我が国企業が海外での出願や権利取得を進める「新しい商標」
1. 色彩の商標:【欧州登録】株式会社トンボ鉛筆
2. 音の商標:【欧州登録】久光製薬株式会社
3. 動きの商標:【欧州登録】東レ株式会社
4. ホログラムの商標:【ドイツ登録】株式会社ニコン
5. 位置の商標:【米国登録】吉田金属工業株式会社
具体的な改正内容
1. 商標の定義を見直し、色彩のみや音からなる商標を保護の対象とする(2条1項1号)。
2. 音の標章を発する行為を使用の定義に追加する等、標章の使用の定義の見直しを行う(2条3項、4項)。
3. 商標の詳細な説明を願書記載事項に追加する等、商標登録出願に関する手続について、所要の規定の整備を行う(5条)。
(1) 「新しい商標」については、出願に際し、その商標に関する詳細な説明の記載や所定の物件(音の商標であればその音を記録したCD等を想定)の提出に関する義務を課す(5条4項)。
(2) 詳細な説明や所定の物件は、その商標の内容を特定するものでなければならないものとし、その要件を満たさない出願については拒絶対象とする(5条5項、15条)。
(3) 登録商標の範囲を定めるに当たっては、詳細な説明や所定の物件の内容を考慮するものとする(27条)。
4. 標章の国際登録に関するマドリッド協定の議定書に基づいて行われる国際商標登録出願に関する手続について、国際登録簿上に記載されている事項のうち所要の事項を商標の詳細な説明とみなす旨の規定の整備を行う(68条の9)。
商標法2条1項の要件を「人の知覚によって認識することができる」として、商標の範囲を視覚から知覚に拡大し、「若しくは色彩」とすることで、色彩を単独の構成要件とした。音は他の要素と結合できないため、「これらの結合」の後に独立して記載し、「その他政令で定めるもの」との表記で将来法改正しなくても、政令で「匂い」等の要素を商標とできることとした。
つまり、今回の改正では、色彩と音のみを新しく保護対象とし、動き、ホログラム、位置や匂い等は見送られましたが、将来、法改正なしで追加される可能性があります。