審決検討:「ニュートンキャップ」(2012-076922)(4条1項15号「指定商品の認定」)

 指定商品はウースターソース(30類31A02)等です。この指定商品について商標「ニュートンキャップ」の「キャップ」の文字は、「瓶のふた」を意味するから、識別機能を有さないとしています。

 瓶用キャップ(金属製のものを除く。)(20類18C13)は指定商品として別途存在しており、これについて「キャップ」は識別力がないというなら分かります。

 しかし、ウースターソースについて「キャップ」は識別力がないというのは、妥当でないと思います。ウースターソースと瓶のふたは、別の商品だからです。


 また、「NEWTON EQUIOMENT LTD」(英国)の商標「NEWTON」を著名と認定していますが、事実なのでしょうか。私は、この商標を聞いたことがありませんでした。審査官は、著名であることの根拠を全く述べていないため、真偽のほどは不明です。


【拒絶査定の理由の抜粋】

本願商標は「ニュートンキャップ」と標準文字で表してなるところ、その構成中「キャップ」の文字は、調味料など本願指定商品との関係において「瓶のふた」の意味を有するものであり、商標として識別する機能を有しないか又は極めて低いものであることから、「ニュートンキャップ」を一体として捉えるよりも、「ニュートン」の文字部分が取引者、需要者に対して出所識別標識として強く支配的な印象を与えるといえます。そうすると、本願商標に接する取引者、需要者が「ニュートン」の文字部分に着目して取引に当たる場合も決して少なくないものといえ、これより「ニュートン」の称呼が生じ、イギリスの物理学者「Isaac Newton(アイザック・ニュートン)」の略称又は力を表す単位の観念が生じるものです。

 一方、「NEWTON EQUIOMENT LTD」(英国)が、商品「2輪・4輪自動車用のガソリンタンクのキャップ」に使用する世界的に著名な商標「NEWTON」(以下、引用標章といいます。)からは、構成文字に相応してこれより「ニュートン」の称呼が生じ、イギリスの物理学者「Isaac Newton(アイザック・ニュートン)」の略称又は力を表す単位の観念が生じるものです。

 そうすると、本願商標と引用標章とは、外観は相違するとしても、称呼及び観念を共通にする類似の商標というべきです。

 次に、本願商標の指定商品と「NEWTON EQUIOMENT LTD」が取扱っている商品「2輪・4輪自動車用のガソリンタンクのキャップ」とは、確かに取引者・販売者が異なる場合があるとしても、いずれも液体状の商品を注入する容器のキャップ(ふた)であるという用途を共通にしており、需要者も相当程度共通している極めて密接な関連性を有している商品といわざるを得ません。

 してみれば、引用標章が著名であること、本願商標と引用標章とは類似する商標であること、それらの商品は用途を同じくしお互いに密接に関連していること、加えて、昨今の各種業界における多様化する事業展開の実情等を総合的に勘案すれば、本願商標をその指定商品に使用するときは、その商品が「NEWTON EQUIOMENT LTD」あるいは同会社と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、商品の出所について混同を生じさせるおそれがあると判断するのが相当です。


 審判官は、「「キャップ」の文字が、その指定商品との関係で商品の品質を表示するなど、自他商品の識別標識としての機能を有さない部分であると判断しなければならない特段の事情も見当たらない。」と判示しております。

 また、「「2輪・4輪自動車用のガソリンタンクの金属製キャップ」と「調味料」とは、その生産者、販売者、購買者、取扱い系統、用途及び原材料等を全く異にするものである」として指定商品も類似しないと判示しております。


 全く、その通りですね。ウースターソースという液体には瓶用のふたは含まれず、全く別の商品です。そして、「調味料」と「2輪・4輪自動車用のガソリンタンクの金属製キャップ」は非類似の商品です。


 本件の査定は、指定商品に対する審査官の曲解に基づく失当なものであったと思います。


【登録査定の抜粋】

 その構成中の「キャップ」の文字が、その指定商品との関係で商品の品質を表示するなど、自他商品の識別標識としての機能を有さない部分であると判断しなければならない特段の事情も見当たらない。

 そうすると、本願商標は、その構成態様及び指定商品との関係における「キャップ」の語の有する意味の上から、構成全体をもって特定の意味を有しない一体不可分の造語と認識し把握されるとみるのが自然である。

 してみれば、本願商標は、これから「NEWTON EQUIPMENT LTD」がその業務に係る商品「2輪・4輪自動車用のガソリンタンクの金属製キャップ」に使用する商標「NEWTON」を認識するものということはできない。

 また、仮に、当該「NEWTON」を想起する場合があるとしても、「2輪・4輪自動車用のガソリンタンクの金属製キャップ」と「調味料」とは、その生産者、販売者、購買者、取扱い系統、用途及び原材料等を全く異にするものであるから、本願商標をその指定商品について使用しても、これに接する取引者、需要者が、当該「NEWTON」を連想または想起するとはいえず、その商品が前記会社又は同人と経済的、組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのごとく、商品の出所について混同を生じさせるおそれはないと判断するのが相当である。