[事案の概要]
本件は,商標権を有する原告A及び原告有限会社マス大山エンタープライズが,被告が「被告標章」を使用して空手を教授する道場を運営し,空手の興行たる大会を開催したことは商標権を侵害する行為であると主張して,被告に対し,不法行為に基づく損害賠償金の支払を求めました。
さらに,被告との契約により「極真」等の標章の使用を許諾した原告国際空手道連盟極真会館が,被告に対し,契約違反に基づく違約金の支払を求めました。
[判決概略]
1. 被告は,原告Aに対し,29万7240円(中略)を支払え。
2. 被告は,原告有限会社マス大山エンタープライズに対し,5万7400円(中略)を支払え。
3. 被告は,原告国際空手道連盟極真会館に対し,100万円(中略)を支払え。
[裁判所の判断の抜粋]
争点1(本件各商標の商標登録が商標登録の無効の審判により無効にされるべきものと認められるか)について
被告は,本件各商標が,公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標(商標法4条1項7号)又は他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標であって,不正の目的をもって使用をするもの(同項19号)に当たる旨主張しました。
国際空手道連盟極真会館がB死亡後に内部分裂したことや本件各商標が原告極真会館を含む内部分裂後の諸派全体を示すものとして需要者に認識されていることが認められるとしても,その余の事実を認めるに足りる証拠がないから,本件各商標の商標登録が無効にされるべきものとは認められないと判示しました。
つまり、内部分裂等は、商標登録の公序良俗違反や不正目的の証拠とならないということです。
争点2(被告標章が普通名称又は慣用商標であり商標権の効力が及ばない商標に当たるか)について
被告は,被告が教授する空手流派は極真空手と表現する以外に表現のしようがないから,被告標章は普通名称又は慣用商標であり商標権の効力が及ばない旨主張しました。
しかし,そもそも,極真空手は空手流派の一派なのであるから,本件商標権の指定商品・役務である第25類の「被服,空手衣」,第41類の「空手の教授,空手の興行の企画・運営又は開催」の普通名称又は慣用商標のいずれにも当たらないと判示しています。
つまり、極真空手は空手流派の一派だから、空手衣や空手の教授の普通名称や慣用商標ではないということです。
争点5(原告Aの損害)について
被告が侵害行為により受けた利益について
1. 被告道場での空手の教授に係る侵害行為により受けた利益
被告の利益のうちの5%が原告Aの損害と認めるのが相当であり,そうであるから,25万円が原告Aが受けた損害の額になる。
2. 空手の興行の企画,運営又は開催に係る侵害行為により受けた利益
被告の利益のうちの5%を原告Aの損害と認めるのが相当であり,そうであるから,第一回大会につき8480円,第二回大会につき3万8760円の合計4万7240円が原告Aの損害の額になる。
商標法38条2項の適用を認めた上で、利益の5%を損害額と認定しています。商標の利益への寄与度を5%と判示している点が勉強になります。