審決検討:「家族信託」(2013-026667)(3条1項3号,4条1項16号「役務の質」)

[拒絶査定の理由]

「本願商標は,『家族信託』の文字を表してなるところ,その構成中の『信託』の文字は,『信用して委託すること。他人をして,一定の目的に従い財産の管理・処分をさせるため,その者に財産権を移すこと。』の意味を有する語であり,また,『家族信託』の文字が,『家族の財産管理や承継に』と称している実情からすれば,本願商標からは『家族の財産管理や承継を信用して委託すること。家族の財産管理や承継を,一定の目的に従い財産の管理・処分をさせるため,その者に財産権を移すこと。』程の意味合いを理解させるにすぎないものであるから,これをその指定役務中,上記意味合いに照応する役務に使用しても,単に役務の質(内容)を表示するにすぎず,自他役務の識別標識としての機能を果たし得ないものと認める。したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当し,前記役務以外の役務に使用するときは,役務の質の誤認を生じさせるおそれがあるから,同法第4条第1項第16号に該当する。


 『家族信託』の文字が,『家族の財産管理や承継に』と称している実情からすれば,本願商標からは『家族の財産管理や承継を信用して委託すること。』程の意味合いを理解させるにすぎないから、単に役務の質(内容)を表示するにすぎないという拒絶理由です。

 『家族信託』の文字が,『家族の財産管理や承継に』と称している実情と言っていますが、全く証拠がありません。そして、証拠がない主張を論拠とする点で不適切と感じます。


[登録査定の理由]

該「家族信託」の文字からは,原審説示ほどの意味合いを理解,認識させるとしても,これが直ちに本願指定役務の質(内容)を直接的,かつ,具体的に表したものと認識させるとはいい難いところである。

 また,当審において調査したところ,「家族信託」の文字が,本願指定役務との関係において,役務の質(内容)を表すものとして一般に使用されている事実を発見することができず,取引者,需要者が,役務の質(内容)を表示したものと認識するというべき事情も見あたらない。

 そうとすれば,本願商標は,これをその指定役務について使用しても,その役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標とはいえないものであって,十分に,自他役務の識別標識としての機能を果たし得るものであり,かつ,役務の質の誤認を生じさせるおそれはないものである。


 「家族信託」の文字からは,原審説示ほどの意味合いを理解,認識させるとしても,これが直ちに本願指定役務の質(内容)を直接的,かつ,具体的に表したものと認識させるとはいい難いとの審決ですが、その通りだと思います。