審決検討:「MiraVision」(2013-005961)(4条1項11号「称呼類似」)

【拒絶査定の理由】

 そこで、本願商標から生ずる「ミラビジョン」の称呼と引用商標から生ずる「ミラービジョン」の称呼とを比較検討するに、両者は、中間音「ラ」の次に位置する長音(-)の有無に差異があって他の配列構成音を同じにしています。

 しかして、長音(-)は、前音の「ラ(ra)」音の母音「a」の余韻として聴取されるにすぎず、該差異音が称呼全体に与える影響は小さいものです。

 また、両者の外観、観念については前記の通りです。

 してみれば、本願商標と引用商標とは、電話等口頭による取引が普通に行われる取引社会の実情よりすると、商標より生ずる称呼をもって取引指標とする場合も少なからずあるといえますから、その外観及び観念の点について考慮したとしても、本願及び引用の両商標から生ずる「ミラビジョン」と「ミラービジョン」の称呼は、誤認混同を生ずるおそれのある類似の商標といわざるを得ず、かつ、本願商標の指定商品は、引用商標の指定商品と同一又は類似するものです。


 「電話等口頭による取引が普通に行われる取引社会の実情」といいますが、何を根拠にしているのでしょうか。この考え方は古い審査の考え方です。昨今では、電話での取引より、インターネットやファックスの取引の方が多いように思えるので、外観を軽視すべきではないと思います。


【登録審決の理由】

 本願商標と引用商標は、それぞれ上記(1)及び(2)のとおり、前者が欧文字であるのに対し、後者は片仮名により構成されているものであり、一見して判然と区別し得るものであるから、両者は外観上相紛れるおそれはない。

 また、本願商標と引用商標は、いずれも特定の観念を生ずることのないものであるところ、前者は特定の語義を認識するとはいえない「Mira」の文字を有し、後者は「鏡」を意味する「ミラー」の文字を有するものであるから、両者は観念において紛れるおそれはない。

 さらに、本願商標は「ミラビジョン」の称呼を生ずるものであるのに対し、引用商標は「ミラービジョン」の称呼を生ずるものであり、両者は第2音「ラ」における長音の有無に差異を有するものであるところ、後者は、「ラ」の音に長音を伴うことにより、その音の響きが強く発音されるものであるから、該差異音が称呼全体に及ぼす影響は決して小さいものとはいえず、それぞれを一連に称呼した場合、語調、語感を異にし、互いに聴別し得るものであるというのが相当である。

 してみれば、本願商標と引用商標とは、外観、観念及び称呼のいずれの点よりみても相紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。


 称呼の「ラ」と「ラー」の違いから、互いに聴別し得るとして、外観、観念及び称呼のいずれも非類似と審示しております。短い音節の商標の場合、長音の差によって非類似とする審決が結構あります。