商標乱発、国全体の1割出願 男性「あくまでビジネス」(朝日新聞 高木真也2016年6月30日)

 「検索に頻繁に引っかかり、『ああ、またか』と思う。その都度、顧客に説明するのが大変」(弁理士)と非難を浴びるのは、大阪府在住の元弁理士、上田育弘氏(53)。知的財産の情報サイト運営会社「ルート ip」によると、2015年に上田氏と同氏が代表の会社は計1万4786件を出願した。国内全体の約14万7千件の約1割を占め、他を大きく引き離す。

 

 商標は、企業や団体が自社の社名や商品、サービス名などを他と区別させるために登録するマーク(標識)だ。上田氏は、他の企業や団体がすでに使っている商品名を中心に、14年ごろから大量出願を始めたようだ。携帯電話を意味する「MOBILE」という言葉には、頭にAからZまでつけて26種類を出し、NHKの朝ドラ「あまちゃん」で有名になった「じぇじぇ」などの流行語も数多い。

 

 問題視されているのは、登録に必要な手数料が支払われていないことだ。通常、1件の出願に少なくとも1万2千円、1万5千件なら2億円近くを特許庁に支払う必要があるが、上田氏は大半で支払っていない。支払わないと半年程度で出願が取り消されるが、その間は特許庁の情報サイトに「審査待ち」と掲載される。

 

 「乱発」のせいで名前の使用をあきらめた例もある。

 群馬県太田市は1月、今秋に開館する美術館・図書館複合施設の愛称「おおたBITO」を今後、使わないと発表した。商標の出願をしようとしたら、上田氏側が先に出願していたためだ。太田市によると、上田氏から「BITO」を使う権利を譲りたいとの趣旨のメールが来たが、「応じるつもりはない。別の愛称を検討する」(担当者)という。

 

 特許庁は5月中旬、ホームページ上で大量申請について、「名前が先に出願されていても取り消される場合があるので、あきらめないで」と呼びかける告知を出した。だが、出願そのものを規制することは難しいという。

 

 元弁理士である上田氏が特許印紙を払わずに大量に商標登録出願を行い、それが他者の商標登録出願の拒絶理由となっていることは、商標弁理士の間で話題になっていました。その目的は、「将来に自分で商標を使う、他人に権利を譲渡する、先に出願しておくことで権利を仮押さえする。」だそうですが、突き詰めれば、「他人に権利を譲渡して利益を得る」だと思います。

 

 今回、朝日新聞に報道されたことで、この問題が明るみに出ました。早急に対応が取られるものと思われます。