小学館への登録商標「かるしお」抗議文は返り討ちの可能性も?

 国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)は2014年3月7日、商標登録した「かるしお」と似た言葉を無断で本の中で使われたとして、小学館と著者に、本の販売中止などを求め抗議したと発表しました。

 

 センターの本は、「国循の美味しい!かるしおレシピ」。「かるしお」はセンターと発行元のセブン&アイ出版の造語で、塩を軽く使いうまみを引き出すとの意味があり、1食あたりの塩分を2グラム未満と定義しています。

 

 小学館は、料理家の山脇りこさんが著者の「『かる塩』『かる糖』料理帖」を今年2月に出版しました。センターは、「『かるしお』はセンターの研究や医学的知見に基づいている。小学館の本には塩分量やエネルギー表示もなく、あいまい。減塩を期待して本を買った人が損害を被る」と主張しています。

 

 センターが保有する登録商標「かるしお」は、3件です。

このうち、書籍に関する指定商品は、「第12類 印刷物」(登録5602867)です。

センターは、「『かる塩』『かる糖』料理帖」の中の184ヶ所に「かる塩」という表現が用いられていることを問題としています。しかし、商標の目的は、出所識別ですから、書籍のなかに登録商標と似た記載があっても、基本的には商標権侵害に当たらないものと思われます。

 

 書籍のタイトルは、需要者の目につくから、センターの書籍と出所混同するという主張もあります。しかし、書籍のタイトルは、内容を表すもので商標的機能を有するものではないという判例がありますので、こちらも商標権侵害に当たらないものと思われます。

 

 かえって、小学館から書籍の販売に損害を与えたとして、賠償を請求されるおそれもあります。