審決検討:KATANA(2012-100967)(商標法4条1項11号「引用商標の認定」)

拒絶査定不服審判における審決を検討しましたので、ご紹介します。 


引用登録第5449188号商標


【標準文字商標】 KATANA

【商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務】  

 9 オーディオスピーカー,ノートブック型パーソナルコンピュータの機能拡張用接続器,携帯型音楽プレーヤーの機能拡張用接続器,スマートフォンの機能拡張用接続器,ヘッドホン,その他の電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品


 審査官によれば、「第1番目の部分は欧文字「K」、第5番目の部分は欧文字「N」の特徴を十分に看取させるものであり、欧文字「K」、「N」を表したものとして理解されるので、引用商標は「KATANA」の文字を表してなるものと認識し、把握され得る」というものです。

 

[拒絶査定の理由の抽出]

 近時、レタリング技法の進展により、商品の広告、宣伝等において、欧文字を装飾的に図案化するなどして表現することが一般的となっている実情があります。

 そして、かなり図案化された文字であっても、その文字が配置された状態や、その前後の文字との関係において、特定の文字を表したものと認識し理解され、称呼されることが少なくありません。そのことを考慮すると、本願商標の構成中、第2・4・6番目の部分は欧文字「A」、第3番目の部分は欧文字「T」であると比較的容易に看取され、図案化されているとはいえ、第1番目の部分は欧文字「K」、第5番目の部分は欧文字「N」の特徴を十分に看取させるものであり、欧文字「K」、「N」を表したものとして理解されます。

 そうすると、引用商標は「KATANA」の文字を表してなるものと認識し、把握され得るものですから、これよりは「カタナ」の称呼及び「刀」の観念も生じるとするのが相当です。


 審判官によれば、「5文字目は、前後で認定した「A」との比較でその態様が異なることから、「A」と特定し難く、また、6文字目は、これを小文字の「n」と認定することも他の文字が大文字であることから不自然さが残るので、引用商標は、全体として特定の称呼及び観念が生じない」とのことです。


 引用商標がKATANAと読めるか否かは、微妙な判断で悩むところです。本件では、5文字目がnと読めるかどうかの判断でこのような審決となりました。


[登録審決の抽出]

 一方、引用商標は、前記2のとおり、欧文字6文字とおぼしき文字を表してなるところ、近時、文字のデザイン化が進んでいるとはいえ、引用商標を構成する各文字は、かなりデザイン化され、それでも語頭から4文字目までが「K」「A」「T」「A」及び6文字目が「A」を表現したものと認識されるものの、5文字目は、前後で認定した「A」との比較でその態様が異なることから、「A」と特定し難く、また、これを小文字の「n」と認定することも他の文字が大文字であることから不自然さが残るものである。

 また、職権をもって調査するも、引用商標の5文字目が「N」を表したものと認識されるとする理由も見いだせない。

 そうとすれば、引用商標は、全体として特定の称呼及び観念が生じないとみるのが相当である。 

 したがって、引用商標から、「カタナ」の称呼と「刀」の観念が生じることを前提とし、その上で、本願商標と引用商標とが類似するものとして、本願商標を商標法第4条第1項第11号に該当するとした原査定は、取消しを免れない。