審決検討:「澪」(2013-066355)(4条1項11号「外観差異」)

 同じ内容のことを言っているのに、審査官と審判官で全く正反対の結論が導き出されているのが面白いです。


 審査官は、「外観については異なるものの、観念については比較できず、「ミオ」の称呼を共通にすることから、全体として類似の商標というのが相当である」と述べています。


 つまり、称呼が同じだから類似であるということです。電話取引が主流な時代の画一的な判断です。審査官は、取引の実情を考慮せず商標のみに着目し、商標自体が類似するか否かを述べることが多いようです。


[拒絶査定の理由]

 本願商標は、漢字の「澪」をやや図案化したものと「MI-O」の文字との組み合わせよりなるところ、「MI-O」の文字は、漢字「澪」の読み方を特定したものと認識されるとするのが相当です。

 そうとすると、本願商標は「澪」及び「MI-O」の文字に相応して「ミオ」の称呼をも生ずると認められます。

 他方、引用商標(引用No.1は「ミオ」の文字を書してなるものですから、該文字に照応して「ミオ」の称呼を生ずると認められます。

 したがって、本願商標と引用商標(引用No.1)とは外観については異なるものの、観念については比較できず、「ミオ」の称呼を共通にすることから、全体として類似の商標というのが相当であり、かつ、同一又は類似の商品に使用するものですから、さきの認定を覆すことはできません。


 審判官は、「「ミオ」の称呼を共通にするとしても、外観において顕著な差異を有し、観念についても相紛れるおそれがないものであるから、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合的に勘案すれば、相紛れるおそれがあるということができない」と述べています。


 つまり、外観が異なるから相紛れるおそれがないということです。審判官は、商標自体が類似するか否かよりも、取引の実情を重視し、取引者が混同するか否かを述べることが多いようです。


[登録査定の理由]

 本願商標と引用商標は、上記(1)及び(2)のとおりの構成からなるところ、外観においては、一見して判然と区別し得る顕著な差異を有するものである。

 次に、称呼においては、本願商標と引用商標は、「ミオ」の称呼を共通にするものである。

 さらに、観念においては、本願商標は上記(1)のとおり、「河・海の中で、船の通行に適する底深い水路。」の観念が生ずることが否定し得ないものであり、他方、引用商標は、特定の観念は生じないものであるから、本願商標と引用商標は、観念上、相紛れるおそれがあるということはできないものである。

 そうとすれば、本願商標と引用商標とは、「ミオ」の称呼を共通にするとしても、外観において顕著な差異を有し、観念についても相紛れるおそれがないものであるから、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合的に勘案すれば、相紛れるおそれがあるということができない非類似の商標といわなければならない。