273.図形と文字の結合商標で、文字部分だけの権利行使はできない?:「TeaCoffee」事件

原告 株式会社エーゲル

原告商標(登録5963932)

被告 アサヒ飲料株式会社

使用商標

 原告が被告に対し、商標権侵害として、3300万円を支払え」と請求した事件です。論点は両商標が類似するか否かという点です。

 

 原告は、(1)「TeaCoffee」が「Tea」と「Coffee」を融合させたものであるのかなどという想像を膨らませる(2)地道にブランディングしてきたことにより,原告商品が一定の周知性を有するに至った(3)図形部分は,取引者,需要者に一義的な観念を想起させるものではなく,特定の称呼が生じるものでもないから「TeaCoffee」だけを取り出すことは許されると主張しました。

 

 これに対し、裁判所は、「TeaCoffee」の語が商品の品質(内容)又はその原材料を記述的に表示しているものとして自他商品識別力を欠くから、原告商標は、「TeaCoffee」の文字部分と図形部分から成る全体の構成が一体となって初めて自他商品識別力を有するに至っていると判断しました。

 また、「TeaCoffee」は、自他商品識別標識であると認識され得る別の表示(京茶珈琲)とともに使用されていたり、記述的表示であると認識され得ることにつながりかねない表示(TEA×COFFEE)とともに使用されていたりするなど,自他商品識別標識であるとは認識されにくい形で使用されてきたことが多いから、自他商品識別力を獲得するに至ったとは認められないと判断しました。

 そのため、原告商標と被告が使用する標章とは,「TeaCoffee」の文字部分と「TEA COFFEE」の文字部分が類似するのみであり,その他に共通する部分はなく,原告商標中の「TeaCoffee」の文字部分は,自他商品識別力が認められない部分であるから,その部分を共通するだけで,他に共通する部分がない原告商標と被告が使用する標章が類似するものということはできないとして、原告の請求を棄却しました。

 

 図形と文字の結合商標を登録した商標権者は、文字部分だけでも権利行使できると思い込みがちです。しかし、文字部分に識別力がない場合は、文字部分だけで権利行使できないので、注意が必要です。